第二章 キャッシュフロー経営における用語を理解する
第八節 長期借入金について理解する
長期借入金とは、言葉のとおり、長期で融資を受けるものです。
長期で融資を受けるとは、どのような状況を指すのでしょうか。
今は、儲かっていないが、将来儲かるかも知れないので、融資をしてもらい、その好機を狙うためのものでしょうか。
或いは、会社を興したが、当面の活動資金が無いので確固とした売上を作るまでの間、当座のつなぎとして受けるものでしょうか。
もしくは、大きな設備投資を行うに当たり、その資金の回収が長期に亘る為、当該資金のバランスを図るために外部より資金を調達するモノでしょうか。
固定資産などは、減価償却により一定の期間に亘り、費用化されるため、手持ち資金で購入すると、その分、資金が足りなくなるという現象が起きます。したがって、長期に借入れに頼ったほうが財務的には好ましいということが言われます。
近年では、リースという方法で、直接費用化の方法もありますが、リース会計の導入により、契約の形態にもよりますが、ほとんどが、固定資産を購入したのと同じような扱いになりました(中小企業は特例で、これまでのように支払額を費用化するのは認められておりますが、本来はリースも借金には変わらないわけですので、債務として認識しておくべきだと思います)
本来は三番目の項目のように、大きな設備投資の際に用いられるのが理想であると思います。
さて、、現実は運転資金を長期の借入に頼ってしまっている企業が多くあります。年末になると、賞与資金ということで銀行もいかがですかと言ってきます。
賞与は儲かった分の分配であるにも関わらず、いつの間にか慣例となり、赤字でも支給するという体質になっているようです。
中小企業では賞与を出せない企業が多いのですが、また、出したとしても、ほんのわずかな金額にとどまります。
当面の資金が立ち行かなくなり、資金を借りる・・・これを長期借入金にする。
将来にわたって、業績の回復要因が見当たればこれも一策かと思いますが、業界的にそれが望めない場合は、長期の資金の使途はあくまで、新事業の開拓等に向けられるべきではないかと考えます。
借入金事態が現状経営体制の保持にあるわけですので、保持から可能性を見出すためにはそれが唯一の方法ではないかと考えます。
借金12億円、数年間連続で赤字(当然)理由は、設備投資の失敗でした。金融機関は、この企業を倒産させる方向で傾きましたが、担保もなく、金融機関担当者とその上司の担当ではそのような事例は作りたくないという後ろ向きの金融側の対応もあり、つなぎが数年続きました。
その後、商品開発とチャネル開発が功を奏し、この会社は黒字企業へと立ち直りました。
もちろん、金融機関の約定変更も欠かせませんでした。また、一定の期間にわたった元金猶予、普通であれは倒産の憂き目にあっていたのかも知れませんが、地方の金融機関ではあまりにも大きな額であったため、併せて、金融機関のおよび腰がこの企業を助けたのです。
長期の借入はややもすると、本来の設備投資ではなく、借金を返済するための借入になることもしばしばです。
前述に企業は正にそのような状態でした。事業計画をきちんと定め、返済計画を明確にして、金融機関の力を借りることも大切な要因です。
だいぶ前になりますが、再建の事業計画を持ち、金融機関に出向いたところ、だったら、その分を融資するので、それなりの試算表を下さいと言われたことがありました。
空いた口が塞がりませんでした。また、資金繰上は、月末で3万円の現金が残ることになっておりました。それを見て、間に合うじゃないですか。といった銀行員もいました。
シュミレーション上では、そうですが、資金の流れはその通りにはいかない、資金が枯渇すれは企業は倒産であるといっても理解を示さない担当者・・・。
多くの企業は、1回目の長期借入の申し込みが、上手くゆき、何とか融資を受けられました。2回目もなんとか、3回目、まだ1回目の残債は残っている。4回目・・・このあたりで非常に「好ましくない」状況に陥ります。
本来の長期借入金の目的を思い起こしてみましょう。上述の借入は、本来の目的から大きく逸脱しております。
数年に亘って、このような状況を繰り返しますと、銀行の金利と元金を支払うために働くようになってしまいます。
そのような時には勇気をもって、借入金をまとめ、期間を延長することです。そして、費用とならない支出を極力減らすことに注力すべきなのです。
ただ、肝心なのは経常の収支で赤字になるときは、経営力がないわけですので、早めに事業はたたむことです。
資本主義の原則を考えれば、2人しか欲しいという人(需要)がいないのに、5人の供給者がいれば、3人は余計であることになります。
経営とはこの2人なるための努力を行うことです。
それが、行えないということは、それに適さないということにもなります。無理して続ければ家族にも迷惑をかけ、本来、夢を持って行ったはずの事業が不幸をもたらすことになるからです。
長期借入金は、月々の支払いが少額であるため、さほど負担には感じないものなのですが、ボクシングでいえばボディブローのように、少額を積み重ねていくろ、徐々に効いてきて、そのうち一人では立てなくなってしまうものです。
反面、以外に、我慢をすると、立ち直ることが多いということもたくさん見てきました。
我慢とは、融資が受けられないことでもあります。融資が受けられないと、元来、頑張り屋の中小企業主は、以外に大きな力を発揮するものです。
中小企業の経営者は、甘やかされると育たず、厳しくされると元気に育つようです。
まるで、タンポポのような雑草のようにです。
誰にも頼れないとなるとすごいパワーを発揮するようです。
正にピンチはチャンスの芽になるのだと思います。
来月のお金がない、従業員に支払う給料もそこをついた。あなたならどうしますか?
企業を存続させようと思ったら、必死に借入に走りますか?死ぬ気で営業をおこないますか?売れるものがなにかを必死に探しますか?それとも・・・・。
守勢に回ると陣地がだんだん無くなりますよ。攻撃は最大の防御という言葉もあります。
長期の借入金とは本来どのような時に利用するものかを常に考え、それに基づき行動をすれば、無借金の経営も可能になるのではないでしょうか。
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