第二章 キャッシュフロー経営における用語を理解する
第九節 手形借入金について理解する
手形借入金とは、手形を担保に借入を受けるものです。
手形とは、ある期日と金額を定めて、支払う証文です。昔は小切手も先付けなどと称して、手形と同じような扱いをしておりました。
紙切れ一枚で取引を行う信用取引の手段です。
よく手形の不渡り2回で倒産という話を聞きますが、不渡りが即倒産ということにはなりません。
不渡りはあくまで銀行取引(手形等に見られる当座取引)が停止になるだけで、それ以外は何ら変わりません。法務局が自動的に法人登記を抹消することもありませんので。
実際、手形が不渡りになっても元気に商売を行っている事業者を多く見てきました。
ただ、手形という債務は残りますので、その支払い義務は負うことになります。
此処では、手形の種類や目的、ならびに運用についてのコメントは致しません。
手形の本質等については、当該項目を検索してみてください。
中小企業はどのような時に手形での借入を利用するのでしょうか。
多くの場合、手形を担保に融資を受ける場合がほとんどです。
手形借入で注意をしなければいけないのは、簡単に借りられてしまうという点です。
この言葉を聞いて不思議に思われる方もいらっしゃると思いますが、保証人もなく、紙一枚で簡単に借りられるとは、いわば、一種のカンフル剤のようで、その時は、間に合っていたつもりでも企業として本質的に問題が解決していなければ、その薬がなければ生きられなくなってしまう特性を持つということです。
たとえば、手形の場合、期日に支払うという特性から、その期日が来た時に支払う原資がない時は、それを上乗せして、また、借入を行ってしまうという行動を起こしやすい事があげられます。
また、金利にしても、一般には考えられない金利であることもしばしばです。
併せて、保証人がいないという点から信用保証料なる不可解な名目で金利を取られることもよくあります。
実際、借入金に対して、様々な名目で結果として、年間48%近くの金利をむさぼる業者もおりました。
信じられないことですが、このようなことが事実です。
「ちょっと一杯のつもりで飲んで・・・。」という歌がありますが、たかだか100万円と侮るなかれです。
いつの間にか100万は200万になり、300万になり、気がついたときは数千万円になるのです。
じっくり、考えると、とうに100万円以上払っていることに気がつきます。
手形借入とは気軽な点が最も危険な点になるということです。
此処に、メーカーからも商品代金の遅延で手形を発行させられ、「臓器を売って金を作ってこい」といわれる、いわゆる好ましくない金融業者からも手形で融資を受け続け、借入が火だるまのようになっていた社長に、手形借入の本質を話し、きちんとした事業計画に基づき、会社運営をしたところ、なんと3年ですべてがきれいになったという事例があります。
元より、金利を含めると大そうな金員を支払いに回していたのですから、再建はそんなに難しい事ではありませんでした。
もちろん、此処に至るには金融機関の協力は欠かせませんでした。
最初は、金融機関に事情を話し(実はこの時が2回目、以前も同様で融資を受けさせたのですが、その時は、仕入れ資金に使ってしまい、逆に借入が膨れ上がってしまった経緯がありました)、的確な再建計画のモノにリスタートさせたところ、本人の努力もあり、完済に至ったわけです。
気軽に借りられる融資は、短期に限り、しかもひっぱらない。大きくなりそうなときは、融資媒体と変えることが肝要です。
利子だけを払っているので、資金が余り外に出ないため、ついつい、これに頼ってしまいます。
しかし、支払いを先に繰り延べているだけで決して本質的な解決には至りません。
それよりも支払う。支払ってしまう。
そうするとお金が足りなくなる。
その時に重要なのは、不足分を借入で入るはかるではなく、本業の商売で入るをはかる方法を画策することが最も重要である点に気づくことです。
その手立てが、見つからないときは、探すことです。
借入金は負債であり、利益ではないのですから。
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