第一章 キャッシュフロー経営とはどういうものか
第三節 税法とキャッシュフロー
税法とキャッシュフローは、きちんと理解して欲しい事柄です。なぜか、それは、前述の会計構造に併せて税金の支払は避けて通れないからです。次の表を見て下さい。図の左側は前出の損益の表ですが右側はそれをお金の出し入れで見たものです。同じですので何の変哲もありません。
損 益 計 算
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入金
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出金
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残高
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売上高
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500
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500
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500
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売上原価
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350
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350
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150
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売上総利益
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150
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150
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販売費及び
一般管理費
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100
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100
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50
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営業利益
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50
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50
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ここで経営者が、税金を納めたくない?などといった発想があるかどうかはわかりませんが、折角50万円の利益が出たのだから50万円で車を購入すれば現金がゼロになるので税金は来ないのではないかといった浅はかな?考えで車を購入したと考えて見ます。
確かに、50万円は車屋さんに支払われ現金はゼロなのですから、税金は出ないように感じるのもうなづけるのですが、前述の会計構造に従えば、それを一括で経費に落とすことを出来ません。
つまり、車であればそれは何年かに亘って価値が減るものとして経理しなければならない訳です。(ここは先ほども学習をしたのでお解かりだと思います)この設例の場合でみると50万円の購入ですので、50万円から償却年数(この場合5年としています)である5で割ると50÷5=10万円となります。
この10万円が実際の支払にかかわらずこれから5年間費用として認められるものです。
この例で見ますと下の表がそれです。上段(上の図)は販売費及び一般管理費が100万円となっていますが下段(下の図)は110万円となっているのがわかります。
つまり、減価償却分が加算されています。50万円の支出をしたのですがそれを経費として認められるのは10万円だけだということになります。これで。40万円の営業利益になることがわかります。
わが国ではこれに約40%位(詳しくは担当の税理士さんにお尋ねください)の税金、16万円ほどが課税されることとなります。そこで、純粋な当期利益は24万円となります。
これに対し、右側の実際の現金の動きを表す表は税金分の約16万円が足りないこととなります。
項目
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金額
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摘要
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入金
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出金
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残高
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売上
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500
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売上
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500
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500
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売上原価
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350
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仕入
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350
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150
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売上総利益
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150
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経費
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110
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40
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一般管理費
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110
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車両購入
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50
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-10
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営業利益
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40
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減価償却
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10
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0
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税金
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16
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税金
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|
16
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-16
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当期利益
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24
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手元現金
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-16
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利益が24万円あるのだから現金があるはずと考えるのは早計で、これが「勘定あって銭足らずの」一つの要因です。
これは、非常に簡単なことなのですが意外と中小企業の経営者の方に知られていません。これは、先程の借入金の一括償還もそうですが、そのまま課税の対象となることを忘れてはいけません。
この事例では、税金の負担分が足りなくなってしまうということです。一般的には、そこで、税金の負担をすべく、どこからかお金を借りなければいけないという状況を作ってしまいます。
私のところへ相談に見える経営者にはいろいろな方がいらっしゃいますが正にここが原因で資金不足を起こしている経営者の方が大変多くいらっしゃいます。「会社は儲かっているのだがお金が足りない」「当社のような会社で一体いくら位の運転資金を持つべきなのでしょうか」「当社の規模で大丈夫な借入限度額はいくら位でしょうか」等など、そんなことも解らないで・・・。
お客様として来社していただいているのにも拘らず、つい言葉が厳しくなってしまいます。或いは、税金を納めたくないばかりに月次の損益を操作している方もいらっしゃいます。
紹介でいらっしゃったMさんは飲食店を経営して12年になります。町の中でも一等の立地での恵まれた営業環境でした。不幸というのは続くもので、ある日二階のお店から漏水事故があり、ちょっとの間でしたがお店が営業できなくなりました。加えて、Mさん自身も事故に合いしばらくお店に出られなくなってしまいました。
ここで当然営業保証という話になります。しかし、保険会社のとった態度は厳しいものでした。Mさんの給料は毎月50万円足らずでした。加えて、会社の利益もここ数年赤字で収益を得られていないので給与分の保証以外は出来ないとしてきました。
つまり、会社の利益はもともとここ数年出ていないのでその保証は出来かねないというものでした。営業の現状復帰の費用はあるとしても営業に関する補償はないとする厳しい判定でした。
ここでMさんは私が想像しなかった反撃に出ました。それは、確かに会社は赤字であるがそれは税金を納めたくないがために恣意的に行った行為であり実質はこうであるとして過去3年間の支払経費のうち個人的支出であるとしたものを抜き出し列挙したのでした。総額はなんと年間で1000万円を超えていました。
税金を払ってでも補償が欲しいという執念でしょうか。つまり、個人分の年収数百万円に1000万円をプラスして年間で約1千数百万円の補償を保険会社と再度交渉をしたいということでした、後は弁護士さんにお任せをし別れましたが、店と奥を明確に区別していないためにおきた事例です。
先ず世の中の仕組みとして中小企業経営者の方に押さえておいて頂きたいのは法人税にしても所得税にしても課税を通過したものが余裕資金となることをきちんと理解しておく必要があります。このように書くと税務署の回し者のように思われますが、実際、控除や措置法などの特例を除けば、課税を通過したものが余裕資金ということになります。
次の表を見て下さい。売上高が30億円経常利益が約1億円見るからに業績の良い会社です。
しかし、もう一つの表を見て下さい。この表でも当たり前のことですが売上高と経常利益は同じです。そこから、先程習った税金が差し引かれ当期の純利益は5300万円となっております。つまり、これが実質手元に残ったものですが、先程の学習でもお解かりの通り以前に購入した資産の減価償却が実際の資金の支出がありませんが経費として認められています。
つまり、その分が資金余裕を生むことになります。ここでは、3154万円がそれです。前出の5300万円と合せますと、8497万円が収支のキャッシュフロー(お金が貯まった)ということになります。
しかし、この会社は、前にも述べた経費として認められない借入れの返済元金が1億1249万円あるため、最終的には2752万円が資金不足となっております。つまり、この分を銀行等より借入れをしないとこの会社のこの年度は立ち行かないという事になります。
売上高
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305,455
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売上高
|
305,455
|
売上原価
|
137,454
|
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売上原価
|
137,454
|
売上総利益
|
168,001
|
|
売上総利益
|
168,001
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販売費及び
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157,097
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販売管理費
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153,943
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一般管理費
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減価償却費
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3,154
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営業利益
|
10,902
|
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営業利益
|
10,902
|
営業外収入
|
534
|
|
営業外収入
|
534
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支払利息
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1,160
|
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支払利息
|
1,160
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経常利益
|
10,276
|
|
経常利益
|
10,276
|
法人税等
|
4,933
|
|
法人税等
|
4,933
|
税引き後利益
|
5,343
|
|
税引き後利益
|
5,343
|
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収支キャッシュフロー
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8,497
|
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借入金等元本返済
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11,249
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長期借入金等資金調達
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0
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預金積み立て等
|
0
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総合キャッシュフロ-
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-2,752
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これは、嘘のようなほんとの話です。ここでは述べていませんがこの企業では翌年も1164万円ほどが現状では足りなくなっていますので今年同様、翌年も借入れをしないとたちゆかか無いわけです。
しかし、ことは簡単ではなくこの2年間で3800万円程の借金が増えるわけですから、その償還期限にもよりますが、下手をすると3年後も資金が足りないという状況になってしまいます。これが中小企業経営の実態です。
売上金は次々と回転していますが、利益が出ているにも拘らず実はお金が貯まっていなかったのです。経営の失敗といってしまえばそれで事足りますが、これが取り返しもつかない状態になった時は、従業員を始めとする多くの人たちが路頭に迷うことになります。
もう一つの例を見てみましょう。年間の売上は16億円経常利益が5340万円まあまあといった企業です。しかし、先程の視点で見ると、税引き後で2617万円の利益で減価償却が1534万円で収支キャッシュフローは4151万円、資金の調達と返済等々を加減しますと3174万円が資金不足となっている現状が見て取れます。信じられないような本当の話です。
売上高
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164,890
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収支キャッシュフロー
|
4,151
|
売上原価
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71,927
|
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借入金等資金調達
|
4,300
|
売上総利益
|
92,963
|
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預金取り崩し資金調達
|
4,740
|
販売管理費
|
86,870
|
|
借入金等元本返済
|
6,279
|
減価償却費
|
1,534
|
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設備投資等支出額
|
2,956
|
営業利益
|
4,559
|
|
預貯金等積立額
|
7,130
|
営業外収入
|
1,113
|
|
総合キャッシュフロー
|
-3,174
|
支払利息
|
332
|
|
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|
経常利益
|
5,340
|
|
|
|
法人税等
|
2,723
|
|
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|
税引き後利益
|
2,617
|
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このように資金の配分を意外ときちんと考えないで行っているのが現状です。企業が右肩上がりで成長している時はこのような失敗もカバーできたのだと思いますが、横ばいになったとたんに、これが中小企業を圧迫し始めるのです。
これが、私が企業の資金繰りを誤らせる要因としてあげているもう一つの要因です。なかなか納得できない領域であるとは思うのですが、税金も費用(経費として計上は出来ませんが)として認識する必要があるのではないでしょうか。これは、当然のこととして税金も資金繰りの一部として捉えることをあらわしています。
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